2020年4月11日 産経ニュース

 新型コロナウイルスをめぐる政府の緊急事態宣言を受けて東京都が11日から始めた休業要請の対象には、インターネットカフェや漫画喫茶が含まれている。都内で約4千人いるとされる「ネットカフェ難民」にとっては“家”を失うのに等しく、社会全体にとっても感染が拡大するリスクがあり、専門家は「支援強化が急務だ」と訴える。

どこへ行けば


 「お前らの居場所はどこにもないんだといわれた気分だ」。東京都豊島区のJR池袋駅前のベンチに座っていた男性(48)は、ため息をついた。勤務先の飲食店が2年前に廃業、アパートの家賃を払えなくなった。求人情報の検索のため週に1~2回はネットカフェを利用し、それ以外は野外で寝泊まりする。

 日雇いの交通整理やとび職のアルバイトで食いつないできたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い1カ月ほど前から採用面接の中止を告げられることが増え、当面の仕事の予定はない。「綱渡りで暮らしてきたが、その綱が切れたようだ」とつぶやいた。

 約2年にわたり新宿区内のネットカフェを転々とする男性(52)も「いつもより客が少ないが、他の店が閉まれば移ってくる人で混み出すのではないか」と不安を隠せない。工事現場でのアルバイトで生計を立て、1泊約2千円の料金を払えば手元に残るのはわずか。「急に出ていけといわれたら困る。行き場は自分で探せばいいのか…」。男性が利用する店の男性店員も「人によってはここが最後の砦(とりで)。追い出すことはできないが、何もしないわけにもいかない」と深刻な面持ちで話した。

 都が平成30年に公表した実態調査結果では、住居がなくネットカフェや漫画喫茶に平日泊まる人は1日当たり約4千人。うち7割以上がアルバイトや派遣などの非正規労働者だと推定されている。

 池袋周辺で生活困窮者に炊き出しや医療相談などを行っているNPO法人「TENOHASI」事務局長の清野賢司さんは「ネットカフェが休業すれば、かえって街に人が増え、感染が広がる恐れがある」と危機感をあらわにする。 平成20年のリーマン・ショック時には失業した派遣労働者が「年越し派遣村」で集団生活を送ったが「今回は感染防止の観点から困難だろう。受け皿が整うまでは休業されては困る。行政も各店舗も実態をよく考えてほしい」と訴えた。

 都は感染拡大を受け、こうした人々の一時的な滞在拠点確保のため、今年度補正予算に12億円を計上。アパートなどの400戸を順次確保するほか、休業要請でネットカフェを利用できなくなった人らの緊急避難先としてビジネスホテルに100人が宿泊できるようにした。11日夕方時点で利用者は90人超。状況に応じて、枠を増やすことも検討していくという。

 貧困問題に取り組むNPO法人「ほっとプラス」の藤田孝典代表理事は「欧米でも低所得者の感染率が高いとされ、日本でもリスクは高い。居場所のない人に早急に住宅を用意し、落ち着いたら転居を手伝うことが必要。社会全体を守るために住居の提供は急務だ」と話した。(千葉元)

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