2020年4月16日 08:30Forbes JAPAN

これまで、「大学生がターゲット。モノなしマルチの実態とは?」や「自分で守らないと奪われる。新成人こそ学ぶべきお金の話」という記事で、USBメモリーを学生に売りつけるモノなしマルチについて警鐘を鳴らしてきたが、ついに複数の事業者に業務停止命令がくだった。このこと自体はとても喜ばしいことだが、依然として、日本では投資詐欺による被害は減っていない。みなさんの自衛の一助となるよう、投資詐欺の現状を明らかにしよう。

詐欺師は手を変え、品を変えてくる

3月26日、東京都生活文化局は、「大学生等に借金をさせ、投資取引に係る高額なUSBメモリーを販売していた3事業者に業務停止命令」というプレスリリースを発表した。今回、業務停止命令を受けた企業が行っていたのは、過去の本コラムでも紹介したものと同じ投資詐欺だった。詳しい内容は次のようなものだ。

「投資でかなり稼いでいるすごい人がいる。話を聞かせたい」このような甘言で、まず勧誘者が友人や後輩を喫茶店などに誘い出す。そこには「投資で稼いだすごい人」がいて、「このUSBを使ってバイナリーオプション取引をすれば、資産が増やせる」と話し、約54万円のUSBメモリーの購入を勧める。

「お金がない」と断ると、「みんな、お金を借りて買っているし、投資ですぐに返せる」と消費者金融や学生ローンでの借金を勧める。ローン申請の方法については丁寧に指導をしてくれるというが、その指導には虚偽申告などの違法行為も含まれている。

今回の業務停止を受けたケースでは、自分自身が勧誘者となって友人や知人に購入させた場合は6万円の紹介料がもらえるという制度もあったが、当然、USBメモリーで大儲けできるわけもなく、損失を埋めたい被害者が購入後に加害者側にまわるという「ネズミ講モデル」が組み込まれていたという。

このような投資詐欺が検挙されていくのは喜ばしいことだが、詐欺師側は手を変え、品を変え、新たな手法を開発してくる。警察庁生活安全局が3月に発表した「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」には、USBメモリーを利用した投資詐欺以外の事例も紹介されている。

それによれば、投資コンサルティング会社の経営者が海外事業で成功しているとして、同社へ出資すれば月利2~4パーセントの配当及び1年後の元本保証を約束するという説明をして、全国の約1万3000人から約459億円をだまし取っていたという。この件では、会社経営者の男ら10人が詐欺罪で、上位会員ら14人も出資法違反で検挙されている。

それ以外にも、健康食品等販売会社の代表取締役が健康食品の販売会に参加した高齢者たちに対し、株式上場や新規事業開始の予定がないにもかかわらず、「東証マザーズに上場申請する」「サービス付き高齢者住宅事業を開始する」などの虚偽情報を与え、同社の社債販売名目で8県の約500人から約15億5000万円をだまし取っていたという。本件においては、1法人16人が詐欺罪等で検挙されている。

このように投資詐欺は投資対象や仕組みを変えながら、将来に不安を抱える学生や高齢者を対象に「おいしい話」を持ち掛けてくる。

前年比で3倍以上の被害額

前出の警察庁生活安全局の資料によれば、利殖勧誘事犯には投資詐欺やマルチ商法などが含まれるが、令和元年における同事犯の検挙件数は41件と前年と同数であった。しかし、被害総額は約1038億円となっており、前年から3倍以上も増加していることがわかる。

出典:警察庁生活安全局「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」

注意すべきは、利殖勧誘事犯における被害額が急増したこと以外にも、この5年間における相談当事者の年代が高齢者から若年層に移ってきているということだ。平成28年の時点では、相談当事者のうち65歳以上が全体の57.5%を占めており、20歳代は3.8%、30歳代は4.0%だったが、令和元年では65歳以上の比率は23.5%に減少し、一方で20歳代は17.7%、30歳代は11.6%と急増している。

出典:警察庁生活安全局「令和元年における生活経済事犯の検挙状況等について」

これらの数字からわかることは、詐欺被害は高齢者だけが被るものではなく、むしろ自分だけで契約が結べるようになったばかりの新成人や大学生、社会に出始めたばかりの新社会人なども危険だという認識を持たないといけないということだ。

2月から、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、株式市場も実体経済も急降下している。このように将来に対する不安を持つ人が増えてくると、残念ながら詐欺師たちが積極的に動き始める。不安になればなるほど、何かに頼りたくなるのが人間の性だからだ。

詐欺師は、得てして「必ず」とか「絶対」という言葉を用いて、元本や将来のリターンを保証する。しかし、世の中にそんな「おいしい話」は存在しない。仮に存在したとしても、一般庶民に話がまわってくることはない。

多くの日本人が想像していた以上に、新型コロナウイルスの影響は大きく、これから発表される経済指標や企業決算、休業や倒産のニュースの増加などにより、その影響の大きさは実感することになるだろう。それとともに、詐欺被害も増加することが予想されるため、みなさん、ぜひ注意していただきたい。

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